1.日時:令和5年3月26日(日)
13:30~16:35
2.場所:東京大学弥生講堂一条ホール
3.参加者:聞き書き甲子園高校生96名、
地域担当者14名、その他スタッフ20名、市原
4.内容:(聞き書き甲子園は平成14年に始まり今回第21回目。4年ぶりの会場での開催)
①優秀作品表彰
徳地和紙紙漉き名人千々松哲也さんを取材した山下沙菜さん(福岡工大附属城東高校2年)が文部科学大臣賞を受賞し大きな賞状を受け取った。
➁優秀写真表彰
徳地鮎釣り名人中島さんを撮影した石川妃里さん(福岡県立伝習館高校1年)と郷土料理名人田中京子さんを撮影した徳森真凰さん(国立有明工業高等専門学校1年)の写真が6点の優秀写真に選定された。最優秀作品のみが賞状を受け取った。
➂高校生による取材地域と名人の紹介
山下沙菜さんが徳地の概要と7人の名人を紹介した。
落ち着いていて、内容も分かりやすくて良かった。
➃名人と高校生の体験談(聞き手:塩野米松(作家)、阿川佐和子さんは体調不良で欠席)
・農林水産大臣賞受賞された鹿毛龍ノ介さん(大阪府長尾谷高校2年)と兵庫県養父市の養蜂名人
-名人が高校生から受け取った手紙の内容を見て、「その人の気持ちが伝わるような内容だった」と。
-農薬を使わない養蜂をしている。特にネオニコチノイド系殺虫剤は神経系の農薬でミツバチ大量死の原因とされている。ミツバチの本能をやられ帰り先が分からなくなる。
-日本は事故が起きてから対応を考える。欧米は事故が起こる前に手を打つ。
-百花蜜は安いけど一番体には良い。いろいろなものが混ざり合っているから。
-長尾谷高校は通信制・単位制の普通科高校。鹿毛さんはしっかりした、リーダーシップのある素晴らしい高校生であることが受け答えやその後のワークショップの行動を見て分かった。学校ではない、個人個人それぞれの生き方があると思った。
・その他4人の高校生とその名人の体験談があった。
⑤その後、各グループ(地域ごと)に分かれ、「聞き書きを振り返って」ワークショップを行った。
その場で徳地で予定していることを説明した。
-7人全員の小冊子を作る。
-8月12日(土)に徳地版の成果発表会を徳地文化ホールで行う。
皆んな賛同し、是非参加したいと。
「名人にまた会えることが楽しみ」と喜んでもらえて良かった。
※翌日(3月27日)場所を変えて昨日のワークショップの続きを行い、東京駅で解散した。
5.まとめ
①「地域の伝統、技術を未来に繫げたい」という想いから公募申請し、全国14地域に選ばれて本格的にスタートした「聞き書き甲子園」プロジェクトが、今回のフォーラムで完結した。
全国から選ばれた高校生が各地域の名人と一対一で向き合って名人の生きざまに触れ、それを通して経験し、学んだことを発表しあい、お互いを知り、これからを語り合った充実した2日間であった。
② 高校生が一人で見知らぬ地域に名人を訪ね、その心まで引き出す難しさや緊張感は、名人の醸し出す所作や言動、暖かいもてなし、孫のように接してくれる愛情で、どの高校生も「聞き書き作品を作る」から「名人のことをもっと知りたい」という気持ちにさせたようだ。
③ 名人と向き合って語り合う中で生まれたこの心の変化が、「聞き書き甲子園」の狙いだということが良く分かった。名人のこと、その地域のことをもっと知り、そのことを通して高校生が「その地域にどう関わっていけるか」を最後のワークショップで語り合った。新鮮な若い感覚でみる見知らぬ土地の印象は、その土地にドップリと浸かっている者にとっては、「それが当たり前」で見逃してしまう。そのような若者感覚の情報発信ができれば、今回全国にPRできた「徳地地域」がもっともっと広がる可能性があることを感じた。
④高校生が「聞き書きを終えての感想」で語った「心に残った言葉」をいくつか記します。
⊛「何かやりたいことを見つけてそれを一流にまで磨く」…進路に迷っていて決心が着いた。
⊛「自分にとって紙漉きは好きなことだから苦ではないし、誇りというより当たり前」…他人にはできない技術を持っていてもなお「当たり前」と飾らない名人の生き様はとても素敵。
⊛「目標を立てて小さくても積み上げていくことが大切」…自らの力で考え行動し、諦めずに積み重ねていくことを意識するようになった。
⊛「仕事は好きでないと続けていけない」…仕事に対してひたむきに、情熱をもって生きることの大切さを学んだ。
⊛「宿命はそれぞれに、きっとあるんやないの。もう出会っとるかもしれんし、わからんよ。後から思うもんやわ」…1つのことに向き合い続けた名人のこの言葉は、漠然とした未来への疑問を消してくれた。
⊛「社会に出たときに、人に使われるか人を使うか、それは自分で選べばいい」…人生には信念と果たすべき役割と楽しみが必要であることを名人から学んだ。
⊛「自分なりの夢、目標を持って、前向きに取り組むことができるからこそ、周りの人が協力してくれるし、新しい道を切り拓くことができる」…これからの時代を生き抜いていける活力を貰った。
6.おわりに
◎高校生はこれまで、学校では先生と生徒、家では親と子という上下関係で生きて来ている。今回名人と対等な立場、一対一で向き合い語り合うという貴重な体験ができた。名人が語る自らの「技」「生きざま」を目の当たりにして、高校生それぞれが「生きる凄さ」を肌で、五感で感じ取ったことと思う。この貴重な体験が今後の彼ら彼女らの人生で「心の支え」になり、何があっても「へこたれない」そして最後は「楽しい」人生となるようエールを送りたい。
◎このプロジェクトに参加するにあたり、ご協力をいただいた、市や地域の方々に感謝申し上げるとともに、この貴重な体験を今後の地域活動に生かしていきたい。
以上
2023.3.27(文責:市原 茂)